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2009/12/09
IFRSの特徴
IFRSには、次のような特徴を挙げることができる。
(1)原則主義(プリンシプル・ベース)
IFRSの特徴は、原理原則を明確にし、例外を認めないという「原則主義(プリンシプル・ベース)」を採用していることである。米国基準は、対象的に、詳細かつ具体的な規定を設ける「細則主義(ルール・ベース)」である。米国基準は25,000ページと膨大なボリュームであるのに対して、原則主義であるIFRSは3,000ページしかないといわれている。
IFRSは、原則を基本とし、業種別の会計基準や各国の法律を前提にした会計基準を策定しない上、数値基準を判断基準としないことから、具体的な取引に会計基準を適用した場合に判断に幅が生じる。その場合には、企業や取引の実態と「概念フレームワーク」に立ち戻って判断し、ルール化のための適用指針は最小限に留めるというものである。
ルール・ベースによれば、一律の会計基準・開示がもたられる一方で、会計基準の趣旨を骨抜きにしかねない巧妙な会計基準逃れが行われることが憂慮され、それに対応するために、会計基準が膨大化し、その開発コストがさらにかさむことも懸念されている。
これに対して、プリンシプル・ベースではあくまで原理原則を示すという方針が貫かれ、個別・具体的な問題については、企業ごと、事例ごとに判断させ、その適否は監査人の専門的な判断に委ねるという方式が採用されてきた。
そのため、原理原則の枠内でどのような会計処理等を採用するかということについて会社が自分で考えることが求められるわけであり、つまり、IFRSの深い理解が必要となる。また、IFRSの原理原則に対して、実務上その解釈をめぐり混乱が起こる可能性もある。
IFRSの原則主義は、以下の6つと説明されている。 ① No Exception (例外がない) ② Core Principles (基本原則(目的)) ③ No Inconsistencies (矛盾がない) ④ Tried to Conceptual (概念フレームワークに直結) ⑤ Judgment (判断) ⑥ Minimum Guidance (最小限の適用指針) |
(2)比較可能性の重視
IASBの「財務諸表の作成および表示に関するフレームワーク」で財務諸表の4つの主要な特性の1つとしてあげられているように、IFRSは比較可能性を重視している。そのため、代替的会計処理方法を極力排除している。現在、IASBは、代替的会計処理が残されているところでは、「原価モデル」や「再評価モデル」、「公正価値モデル」と表現している。また、遡及的適用や遡及修正再表示により、財務諸表の比較可能性を確保・向上しようとしている。
(3)資産・負債アプローチ
IFRSでは、資本取引以外による期首と期末の資本(株主資本)の変動として捉えられる包括利益を経営者の意図に左右されない業績指標として重視している。また、将来のキャッシュ・フローの予測という投資家の意思決定目的に適合する情報を提供するために、公正価値による測定を重視するなど、資産・負債アプローチの考え方に立脚した会計基準となっている。
(4)公正価値会計、キャッシュ・フロー会計、連結会計の重視
IFRSは、企業の経済的実態を的確に反映するために、また、経営者の恣意性を排除するために、公正価値会計へのシフト、キャッシュ・フロー計算書の精緻化を推進してきた。これに経済的一体説に基づく連結会計を加えた3つは、IFRSの三大潮流といえる。
(5)経営者の恣意性の排除
会計情報に経営者の意図を反映させるべきか否かという問題は、会計情報の有用性をも左右する会計の永遠の課題であるが、IFRSは、資本取引以外による期首と期末の資本(株主持分)の変動という経営者の意図に左右されない業績指標を重視している。代替的会計処理方法を極力排除しているのも、比較可能性を高めるとともに経営者の恣意性を排除するためである。
(6)実質優先思考
IFRSでは、表現の忠実性を重視する立場から、形式よりも実質を優先して、企業の経済的実態を明らかにしようとしている。
(7)豊富な注記
IFRSでは、企業の経済的実態を明らかにするために、財務諸表の本体以外に、定量的にも、定性的にも豊富な注記が行われる。
(8)演繹的アプローチ
世界の会計実務の中で慣習化されたものの中から妥当なものを抽出するという帰納的アプローチではなく、IFRSは、利用者の情報ニーズを満たす目的適合性のある会計情報を提供するために演繹的に会計基準を設定している。また、迅速かつ機動的に対応可能なように個別のテーマごとに設定される会計基準相互間の理論的整合性を確保するために、「概念フレームワーク」を設定している。
【参考文献】橋本尚『図解・イラストによるIFRS国際会計基準入門』(銀行研修会)、その他