【決算・開示コラム】[IFRS受け入れに関する課題と対策 (1)原則主義への対応]

財務、会計に関わる方々に向けた情報ポータルサイト

  1. CFO LIBRARY ホーム
  2. 決算・開示コラム
  3. IFRS受け入れに関する課題と対策 (1)原則主義への対応

COLUMN 決算・開示コラム

2009/12/09

IFRS受け入れに関する課題と対策 (1)原則主義への対応

(1)ルール・ベースである我が国の会計基準

我が国は、ルール・ベースに親しんできた国である。昭和24年に設定された企業会計原則は理論規範であって実務規範とはいえないが、それが会計実務で機 能したのは、税務行政上の詳細な通達がルールの役割を果たしてきたからであると考えている。しかしながら、会計ビッグバン以降は、会計基準のほか、適用指 針や実務対応報告等が整備され、会計基準のルール化が進んできたことから、現在は、税法の会計実務への影響力は固定資産関係を除き相当に低下し、逆に、税 法が会計基準をルールとして採用する分野が拡大してきている。
我が国の会計は、ASBJが公表する会計基準、適用指針、実務対応報告、規制当局の制定する財務諸表等規則・ガイドライン等のほか、日本公認会計士協会 の作成する実務指針等の下、ルール・ベースの世界である。したがって、会計実務の世界では、ある特定の会計処理について、会計基準等に認められない旨明記 されている会計処理以外の処理は容認されるのではないかという考えが根強くある。我が国において、原則主義のIFRSが有効に機能するには、財務諸表作成 者である企業と監査人、証券アナリスト、証券取引所、監督官庁等との間に原則主義に関する認識を共有する必要があり、そのために、原則主義の判断に係るガ イドラインのようなものが必要ではないかと考えられる。数値基準がなくても監査人と会社の協議により適切な会計処理が決定されるには、ルール・ベースに関 する関係者の理解と認識の共有化が不可欠であると考えている。

(2)市場関係者の全員が取り組む課題

IFRS任意適用会社の監査において、監査人が会社の採用する会計方針の妥当性について協議する際に、監査人の相手方は、会社の実態を熟知しIFRSに も精通している会社担当者であると考えられる。原則主義会計の下では、ルール・ベース基準と比べると、監査人が会社との協議において会社関係者を説得する 必要がある場合には、単なる会計専門知識・技能に留まらず、被監査会社の事業の全貌を把握し、かつ、幅広い見識と説得力等のコミュニケーション能力が要求 される。その意味では、監査人は、従来以上に自己研鑽し、高度な知識、判断力や説得力が求められる時代を迎えているといえる。
今後、世界100カ国以上の国がIFRSを導入していくことになる。IASBは各国特有の問題に対応してルールを作成することはしないだけに、IFRS という看板の下で、各国においてルール化が進行し、何々版IFRSという実態になることが危惧される。原則主義への対応は、監査人、企業、証券アナリス ト、証券市場関係者等が問題認識を共有して取り組んでいかなければならない課題である。

【参考文献】日本公認会計士協会研修資料

コラムカテゴリ一覧