【決算・開示コラム】[IFRS受け入れに関する課題と対策 (7)会社法および税法との関係]

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COLUMN 決算・開示コラム

2009/12/09

IFRS受け入れに関する課題と対策 (7)会社法および税法との関係

IFRSは上場企業の連結財務諸表に適用され、個別財務諸表は自国基準が適用される。我が国の中間報告案では連結先行が提案され、IFRS受け入れ後も国内基準はIFRSとのコンバージェンス作業は継続される。我が国の会社法は、自国基準である企業会計基準を基本的に受け入れており、また、会社法の計算書類である損益計算書の当期純利益が法人税申告書の別表4に記載され、法人税法の規定に基づき加算および減算されて課税所得が計算されるという「確定決算主義」が採用されている。その意味では、我が国の法制では、IFRSとコンバージェンスが継続される自国基準を会社法および税法は受け入れるという枠組みとなっている。
会社法の会計基準には、ディスクロージャーの目的と配当可能利益の計算という2つの目的がある。会社法はIFRSを受け入れるが、配当可能利益の観点からは、規制規定を設けて対応することになると考えられる。会社法の配当計算や税法の課税所得計算は、客観性と検証可能性が確保され、かつ、未実現利益が排除された従来の取得原価主義会計とは理念を共有している。他方、投資家等への財務情報の提供を目的とするIFRSにおいては、適正な期間損益計算とともに、企業が将来も存続し発展していくかどうかという将来志向の情報が要求されている。そのために、IFRSにおいては、経営者の見積りや公正価値といった概念が導入され、かつ、画一的な数値基準は設けず企業の実態に即して判断するという原則主義が採用されている。客観性、検証可能性、公正性等の観点から、会社法(配当可能利益計算)や法人税(課税所得の計算)の基準が、IFRSと理念を共有化することが困難ではないかとの懸念がある。
IFRS受け入れは、金融商品取引法上の会計基準と会社法および税法上の基準の関係が現行のままで維持されるのかどうかという、大きな会計制度上の課題を抱えている。

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