【決算・開示コラム】[いまさら聞けない「敵対的買収防衛策」 (2) 経済産業省編   (武田雄治)]

財務、会計に関わる方々に向けた情報ポータルサイト

  1. CFO LIBRARY ホーム
  2. 決算・開示コラム
  3. いまさら聞けない「敵対的買収防衛策」 (2) 経済産業省編   (武田雄治)

COLUMN 決算・開示コラム

2005/05/04

いまさら聞けない「敵対的買収防衛策」 (2) 経済産業省編   (武田雄治)

(昨日の続き)
昨日、敵対的買収防衛策の検討主体がいくつもある、という話を書きました。
今日は、その中の1つ、経済産業省が検討している買収防衛策について。

■経済産業省は、4月22日に「論点公開~公正な企業社会のルール形成に向けた提案」を公表した。

原文はコチラ↓↓(PDF)
http://www.meti.go.jp/press/20050422005/050422ronten.pdf

ポイントは、
(1)経営者の保身目的の乱用を避けるため、防衛策の適用条件を明示したこと、
(2)買収防衛策の情報開示を拡充したこと、
である。

(1)の経営者の保身目的の乱用を防ぐための条件は、次の3つを示しており、いずれか1つを満たす必要があるとしている。

 1.第3者チェック型(独立社外チェック型)
 2.客観的解除条件設定型
3.株主総会授権型

1.の「第3者チェック型」とは、敵対的買収防衛策が、経営者の保身目的の乱用とならないよう、社外取締役社外監査役のチェックを事前に受けろ、ということ。
2.の「客観的解除条件設定型」とは、買収者の提案の方が企業価値が高まる場合には防衛策を解除することをあらかじめ決めておけ、ということ。つまり、敵対的買収者に経営を任せた方が現経営陣よりも企業価値を高められる場合もあるわけで、そういう場合にまで買収防衛をすれば経営陣の保身目的の防衛と判断されることになる。よって、防衛策解除条件を事前に設定しておくことが必要となるのである。
3.の「株主総会授権型」とは、防衛策の導入時点で株主総会の承認を受けろ、ということ。つまり、平時に株主総会で防衛策を含む定款変更の承認を得て、有事には定款に定めた方法に従って取締役会が判断し、恣意的判断を排除するという方法である。

経済産業省の報告書では、「株主総会授権型」が、「株主の理解を得る上で最も合理性が高い方法」としている。
このブログでも4月18日に書いたが、わが国には独立した社外取締役が少ないことを考えれば、「株主総会授権型」は妥当な考え方かもしれない。
ただ、磯崎さんのブログにも、「今年今から6月の総会に具体的なスキーム案までかけて了承を求めるとすると、スケジュール的にかなりキツイですよね。」と書いてありましたが、確かに相当キツイと思います。

(2)の買収防衛策の情報開示を拡充については、報告書は次の2点を示している。

 1. 営業報告書での開示義務付け
 2. 証券取引所の開示ルール見直し

1.の営業報告書での開示とは、会社の重要な経営に関する事項は営業報告書で開示していることから、敵対的買収への対応策として導入する新株予約権などに関する情報も営業報告書に記載して開示しろ、ということだ。
2.については、各取引所が株式市場の公正性と信頼性を確保するために会社情報に関する適時開示規則を設け、投資判断に重要な影響を及ぼす事項を決定した又はそうした事項が発生した場合には、当該内容を直ちに開示することを義務付けているが、敵対的買収防衛策についても適時開示するように取引所ルールの見直しを期待するものである。

以上を、まとめると、「防衛策を導入するには、情報の開示をして株主の理解を求めなさい」、というシンプルなものです。

今回の、経済産業省からの提言には、上記で示した
(1)経営者の保身目的の乱用を避けるため、防衛策の適用条件の明示
(2)買収防衛策の情報開示の拡充
以外に、下記についても提言している。

まず、企業が導入する防衛策のうち、特定株主に株主総会での拒否権を与える、いわるゆ「黄金株」に関しては、買収者以外の株主も差別的に扱うとの問題点を指摘。黄金株発行に一定の制限をかける必要があるとの考えを示唆した。

また、経済産業省は、TOB(株式公開買付)制度を見直し、買付期間中に会社側が対抗策をとった場合に、TOBを撤回しやすくする必要があるとも提言した。現行法上、敵対的なTOBの期間中に買収者の持ち株比率を下げるために、事前に登録した新株の発行や株式分割などもできるが、TOBの撤回は難しい。

なお、経済産業省は、5月に法務省と共同で「企業価値防衛指針」を発表する。

武田雄治ブログ

公認会計士 武田 雄治

コラムカテゴリ一覧