【決算・開示コラム】[いまさら聞けない「敵対的買収防衛策」 (3) 東証編   (武田雄治)]

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COLUMN 決算・開示コラム

2005/05/05

いまさら聞けない「敵対的買収防衛策」 (3) 東証編   (武田雄治)

(昨日の続き)
先日は、経済産業省の買収防衛策について書いたが、
本日は東京証券取引所の買収防衛策について。

東京証券取引所は、4月21日、上場企業代表者に対して、『敵対的買収防衛策の導入に際して投資者保護上の留意事項について』という指針を配布した。

この指針では、留意事項として、次の4つを挙げている。

(1) 株主・投資者に対して十分な適時開示が行われていること
(2) 防衛策の発動、解除及び維持の条件が不透明でないこと
(3) 買収者以外の株主・投資者に不測の損害を与える要因を含むものではないこと
(4) 株主の意思表示が機能しない防衛策でないこと

(1)については、防衛策導入の目的防衛策発動時に株主・投資者に与える影響等の開示を徹底するように求めている。
(2)については、経営者が自己保身のために防衛策を使う恐れがあるため、発動の手続と判断基準をあらかじめ公開し、「不透明」な状態がないように求めている。
(3)については、例えば、買収者が現れたことを行使の条件とする新株予約権を利用した防衛策(いわゆる「ライツプラン」、「ポイズンピル(毒薬条項)」)のうち、新株予約権を防衛策導入時点の株主等に割り当てておくといったスキームは、買収者以外の株主とも不平等になる可能性があるため、投資者保護上適当ではないとしている。
(4)については、例えば、一部の株主に合併拒否権など特別な権利を与える「黄金株」や、一株に議決権を100個付けるような複数議決権付き株式について、原則として発行の自粛を求めている。

なお、ニューヨーク証券取引所も上場後の黄金株の発行を禁止している。

いずれも、「上場企業」に対して、投資家の平等な権利を侵害したり、投資家に予期しない損害を与える恐れのある防衛策は行き過ぎとして、見直しを求めている。

今回の指針に強制力はないが、指針に反する防衛策を導入した企業には、年内に定める予定の「規制」化後に見直しを求める。是正しない企業には上場廃止も検討する。また、防衛策の情報開示が不十分な企業も、適時開示違反として指導対象とする。

今日紹介した東証の指針や、昨日紹介した経済産業省の報告書は、6月の株主総会シーズンに向けて買収防衛策の導入を検討する企業が増えているため、行き過ぎた防衛策を戒めたものだ。

なお、2005年3月末時点の株主に等しく新株予約権を割り当てる敵対的買収防衛策を公表していたニレコは、4月以降に取得した株主との間で不平等が生じかねないことから、この防衛策を変更し、敵対的買収者以外に等しく新株を配分する信託型ポイズンピルを新たに導入すると発表した。

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公認会計士 武田 雄治

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