【決算・開示コラム】[日本版SOX導入? 企業統治の会計士監査義務化へ    (武田雄治)]

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COLUMN 決算・開示コラム

2005/05/17

日本版SOX導入? 企業統治の会計士監査義務化へ    (武田雄治)

アメリカで2002年に導入されたSOX(サーベンス・オクスレー法=企業改革法)の日本版が我が国でも導入され、コーポレート・ガバナンス(企業統治)に関する公認会計士の監査が、日本でも義務付けれられることになりそうだ。

SOXは、エンロン事件やワールドコム事件など相次いだ粉飾決算事件をきっかけに、米国上場企業に対し「不正防止体制」の整備を義務付けたもの。

日本での導入は2008年3月期予定であり、対象は上場企業全社。不正な会計につながる問題がないか、公認会計士による監査を義務付ける。監査報告書も公表する。
2008年3月期導入予定ということは、2007年4月1日から開始する事業年度から監査を義務付けられると解釈できる。上場企業はあと2年弱で監査に耐えうる対応をしなければならない。

企業側は、「不正防止体制」構築のため、内部管理体制や日常の業務遂行体制、取締役会等の意思決定プロセスなどを文書化して残さなければならない。日本の企業は上場会社といえども、業務プロセスを文書化する作業に馴染んでおらず、また文書化されていても適時更新されていない企業も多い。不正防止体制を構築し、これを文書化するという作業は、想像以上に膨大な時間とコストを要する。

米国では、内部統制の整備・監査の費用は1社あたり数十億円に上り、米国の大手会計事務所は2004年度の監査関連報酬が前年に比べ約2倍増加している。
米国に上場している日立製作所も人件費だけでも100億円、監査法人への報酬も10億円以上支払ったという。

先日、ある上場企業の社長さんにお会いする機会があったのだが、社長さんは「アメリカの上場企業で黒字を出している会社は本当にすごいと思いますよ!」と言っていた。それ程、上場維持にかかるコストがかかるということだ。

我が国の場合、会計監査で監査法人に支払う報酬が2~3千万円程度であるから、SOX関連コストも米国ほど高額にはならないとは思うが、相当のコスト負担となることは間違えないだろう。小さな会社でも新興市場へどんどん上場しているが、これからはこういう会社が株式公開するメリットはなくなるかもしれない。

金融庁は早ければ来年の通常国会に証券取引法の改正案を提出したい考えだという。
日本版SOXの詳細については、6月にも金融庁の企業会計審議会が基準の骨格をまとめた報告書を公表するという。上場企業は、報告書が公表されたら早急に対応した方がよいと思われる。

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公認会計士 武田 雄治

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