【決算・開示コラム】[監査人の指導的機能の発揮による決算早期化と監査効率化(2)]

財務、会計に関わる方々に向けた情報ポータルサイト

  1. CFO LIBRARY ホーム
  2. 決算・開示コラム
  3. 監査人の指導的機能の発揮による決算早期化と監査効率化(2)

COLUMN 決算・開示コラム

2012/10/12

監査人の指導的機能の発揮による決算早期化と監査効率化(2)

昨日のエントリー「監査人の指導的機能の発揮による決算早期化と監査効率化」は、多くの方にご覧頂きました。

監査法人勤務のマネージャーさんと思われる方より、次のようなコメントを頂きました。

「短信の隅から隅までチェックするのは責任を広げ過ぎだと思いますがどのように思いますか?有報に関連する部分なら分かりますが、報酬との兼ね合いによってはスタッフにサービス残業を強いてる現実もあると思います。」

昨日のエントリーのとおり、私は監査法人1年生の頃、決算短信を隅から隅までチェックすることに疑問を持ち、上司に質問をしたわけですが、結局、監査法人勤務中は決算短信を隅から隅までチェックしていました。全ページ、一言一句チェックしていました。クライアントと一緒に全文の読み上げをしたこともありました。それ程、決算短信チェックを徹底して実施していました。決算短信200ページ、有価証券報告書200ページを8時間連続でチェックした時は、しばらく眼球と頭の痛みが取れなかったということもありました。

今は監査手続も増え、監査調書も細かくなり、従来より監査工数が増加している中で、監査報酬は比例して増えないと思いますので、決算短信をここまで細かくチェックするほどの余裕はないと思います。

私は、監査人(監査法人)が決算短信の隅から隅まで表示チェックしていない(できない)現状がダメだと言いたいわけではありません。私が言いたかったことは、監査人は「頼れる先生」だということです。

監査人の大半は、決算短信の作成者側の経験がないと思いますが、チェックするのと作成するのとではその苦労は全く異なります。100~200ページの決算短信を作成するという行為は、それはそれは大変な苦労を伴います。それを作成者がセルフチェックするにも限界というものがあります。多くの作成者は監査人にチェックして欲しいと思っているのではないかと思います。一方、監査人は決算短信のチェックは業務として行わない方針であったとしても、クライアントが作成した決算短信に目は通すと思います。ここで「頼れる先生」が指導的機能の発揮を自ら拒むようなことがあれば、それは残念なことであります。

ほとんどの監査人は、きちんとクライアントに対して指導・助言していると思います。しかし、弊社(アガットコンサルティング)に決算早期化・効率化に関する相談を頂く会社の決算遅延原因を調査すると、監査人とのコミュニケーションに問題を抱えているケースが少なからずあります。これには、会社側が監査人とのコミュニケーションを拒んでいるケースもありましたが、監査人側のクライアントへの指導不足や過剰な要求が原因と思われるケースもありました。「~してはいけません」だけでは育児を放棄した親でも言えることで、どうしたら正しくなるのか、どうしたら改善できるのか、どうしたら効率化できるのか、といった指導・助言を行うことがプロフェッショナルに求められれていることであり、これは外観的独立性、精神的独立性とは別次元の話だと思います。昨日の繰り返しになりますが、クライアントへのちょっとしたアドバイスが、クライアントの決算効率化につながり、監査人の監査効率化につながると確信しています。

▼現役監査人にも読んで欲しいと思います。ご参考になれば幸いです。

本当にわかる公認会計士の仕事本当にわかる公認会計士の仕事
著者:武田 雄治
販売元:日本実業出版社
(2011-09-08)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

武田雄治ブログ

公認会計士 武田 雄治

コラムカテゴリ一覧