【決算・開示コラム】[決算早期化がなぜ経営に必要なのか?]

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COLUMN 決算・開示コラム

2012/11/07

決算早期化がなぜ経営に必要なのか?

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本日、オービック様主催の「オービック情報システムセミナー」において、「決算早期化がなぜ経営に必要なのか? ~決算早期化がもたらす効果、そしてこれからの経理部門の役割とは~」というテーマで講演をさせて頂きました。お題は主催者様から頂いてもので、巨大企業から未上場企業まで幅広い顧客を持つオービック様のセミナーということで、決算早期化の技術的な話よりも、経営者視点から決算早期化がなぜ必要なのか経理部門はどうあるべきなのか、という話を軸にお話しさせて頂きました。よって、決算早期化の方法論(例えば、子会社の決算早期化をどうやってやったらよいのかなど)を期待されてご来場された方に少々期待外れだったかもしれませんが、方法論は拙著「決算早期化の実務マニュアル」(中央経済社)に詳述しておりますので、こちらを是非ご覧頂ければと思います。

「決算早期化がなぜ必要なのか」と問われると、第一義的には「投資家のために決算情報を早期に開示するため」となるでしょう、しかし、それだけではないと思っています。私は、決算早期化を行う目的は、「あるべき経理の体制を構築すること」であると思っています。「あるべき経理の体制」はどのようなものかといいますと、拙著「決算早期化の実務マニュアル」において、経理部は「情報製造業」であると定義し、「7つのベルトコンベア」でつながった情報の製造工程を構築することであると説明しました。この「情報製造業」の考え方は、本当に多くの方に共感して頂いております。ただ、製造工程を構築しても、経理部長や経理課長といったカリスマやベテランが決算業務を抱えていたら、絶対に決算は早期化できません。決算が遅い会社でよく見受けられるのが、カリスマが仕事を抱えすぎなのです。こんな状態でIFRSが適用されたら決算早期化どころか、決算遅延は避けられません。そこで、拙著では、「7つのベルトコンベア」で製造工程を構築した後に、「決算業務をマクドナルド化する」ことを提案しております。つまり、マクドナルドの厨房において料理のプロではない高校生のアルバイトでも10秒や20秒でハンバーガーを作ってしまうように、決算業務も個人の能力に依存いないように「仕組化」することを提案しております。

マクドナルドの厨房では、アルバイトが玉ねぎやピクルスを包丁で切るというようなことはしていないでしょう。予め具材が目の前に並んでいるはずです。だから、オーダーが入ったら、バンズ(パン)を焼いて、ミートを焼いて、具材を乗せたら終わりです。ここには個人の調理能力に依存する必要がない「仕組み」があります。同じ事を決算業務でやれば良いと考えています。決算業務でいうところの「具材」とは、決算資料です。すべての決算資料のテンプレートを事前に用意しておき、決算前に各担当者の目の前に並べてあげれば良いのです。

決算資料作成をテンプレート化していないから「属人化」がおきます。決算資料に属人化がおこると、正直いって監査はやりにくいのです。監査人がみて分からない資料は、皆様の経理部の他の方が見ても分からないと思います。チェックも甘くなるかも知れませんし、監査工数も増えるかもしれません。

私が決算早期化コンサルティングを行う際は、クライアントのすべての決算資料のデータを頂きます。全資料の網羅性や有用性をチェックします。これまで受注したコンサルティング案件で、資料の網羅性や有用性に問題がなかったクライアントはゼロです。すべてのクライアントがマクドナルド化からはほど遠い状態でした。しかし、1年かけてマクドナルド化をしていきます。するとどうなるかというと、脱カリスマ化が達成できるわけです。

今でも経理部長が決算短信有価証券報告書を作成しているという会社は珍しくありません。しかし、私は、経理部長がやるべき仕事ではないと思うのです。経理部という部署は「情報製造業」であり、経営の中枢部門であると思っています。CFO不在の会社であれば、経理部はCFOの役割も担わなければなりませんし、CFOが在籍されている会社であれば、通常はCEOとCFOの利害が対立しますので、その間に立って経営判断に有益な情報をタイムリーに提供していかなければならないと思います。

決算早期化というのは、上述のとおり「あるべき経理の体制を構築すること」であると思っておりますが、その効果は、経理部を伝票屋や短信作成屋の部署ではなく、インテリジェンスな業務を行う部署変えることができるということだと思っております。

拙著の最終ページ(P218)では、IFRSに備えた決算早期化対策の話と絡めて、以下のように締めくくっています。

IFRSの特徴の一つである「原則主義」は、経理部の各人が「考える」「判断する」ということを行う基盤を作るチャンスと捉えてほしい。また、IFRSのもう一つの特徴である「実態優先主義」は、経理部の各人が会社のビジネスの「実態」を知るチャンスと捉えてほしい。そのようなインテリジェンス業務にできるかぎり多くの時間を割き、レポーティング業務の時間をできる限り削減すべきである。IFRSは、経理部を「情報製造業」に変える最大の機会である。あくまで、レポーティング業務は、一部の担当者の能力に依存せず、精度の高いものをタイムリーに開示する「仕組み」を構築しなければならない。

わたしは、独立した時から「経理を変えれば、会社は変わる!」という経営理念を掲げています。
独立から7年経った現在でもその考えは揺らぎません。経理を変えれば、会社は変わります。決算早期化コンサルティングを通して、1社でも多くの経理部を経営の中枢部門になるように変えていき、「やりがいある経理部」を作っていきたいと思っております。

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公認会計士 武田 雄治

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