【決算・開示コラム】[ワールド 株式非公開化へ、 株式上場のメリット・デメリットとは?]

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COLUMN 決算・開示コラム

2005/07/26

ワールド 株式非公開化へ、 株式上場のメリット・デメリットとは?

(メールマガジン『CFOのための最新情報』(2005/7/26号)より抜粋、一部加筆修正)

アパレル大手のワールドが我が国過去最大級のMBO(Management Buy-Out)を実施するようだ。
MBOとは、「経営陣により企業買収」ともいわれ、経営陣が自己資金や銀行等からの借入により企業や部門を買収することをいう。 銀行等から借入を行う場合は、譲り受ける企業や部門の資産等を担保とするLBO(Leveraged Buy-Out)という手法を使う。 ライブドアがフジテレビを買収しようと試みた際に、フジテレビの資産等を担保に3,000億円もの資金を金融機関から調達をしようしたが、これもLBOという手法である。
各メディアによると、ワールドはTOB(Takeover Bit、株式公開買付)を発表し、発行済み株式の100%買い取りを目指す模様。買収額は約2,200億円にのぼり、国内のMBOとしては過去最大級らしい。
先月の株主総会では多くの会社から「買収防衛策」が議題にあげられたが、ワールドは究極の買収防衛策である「非公開化」を選択したことになる。上場企業が非公開化を目的にMBOを実施するのは国内で初めてだという。
昔の話だが、資金調達する必要もなく、IR(投資家への広報活動)もほとんどしていない会社の方へ「なぜ上場しているのか?」と聞いたことがある。すると、「知名度を高めたいだけ」という返事。 確かに知名度が上がれば、取引量も増大するだろうし、信用力も違う。資金調達以外に大きなメリットが得られる。
しかし、株式上場をすると、多額の資金調達ができることへの見返りに、IRや詳細な情報開示などを含め上場を維持するためのマンパワーと多額のコストを要するというデメリットもある。また、四半期決算導入により株価が短期的な業績に影響を受けることとなり、さらに株主が将来への設備投資等よりも利益配当を要求することから、長期的で腰をすえた経営に専念出来ないというデメリットもある。ワールドの非公開化の最大の理由もここにあるようだ。 そして、なにより、ライブドアのニッポン放送株買占めを発端に敵対的買収が他人事ではなくなってきたという大きなリスクもある。村上ファンドのような「物言う株主」が増加したことにより経営に介入されるリスクも高まっている。
これらを勘案すれば、ワールドのように資金力があり、知名度も高い会社が株式を上場するメリットは余りない。今回のMBOにより新たな負債を抱え、さらに市場からのチェックも効かなくなるリスクもあるが、逆に、非公開化することによって、コストを削減できるとともに、経営のスピードを高めることができる。 資金調達する必要のない企業の「非公開化」という戦略は、今後の経営の選択肢としては十分に考えられるだろう。 今回のニュースは上場の意味を問い直すきっかけとなったのではないだろうか。
ちなみに、ある調査によればアメリカでは昨年135社もの企業が非公開化しているらしい。 SOX(サーベンス・オクスレー法=企業改革法)の導入による1社平均数億円ものコスト負担の増加が最大の原因であるといわれている。 日本版SOXの導入が予定されている2008年3月期以降、我が国でも非公開化する企業が増加するのだろうか。

(日本版SOXについては、5月17日のブログを御参照下さい)

武田雄治ブログ

公認会計士 武田 雄治

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