【決算・開示コラム】[LLP(有限責任事業組合)って、何??]

財務、会計に関わる方々に向けた情報ポータルサイト

  1. CFO LIBRARY ホーム
  2. 決算・開示コラム
  3. LLP(有限責任事業組合)って、何??

COLUMN 決算・開示コラム

2005/08/28

LLP(有限責任事業組合)って、何??

(メールマガジン『CFOのための最新情報』(2005/8/20号)より抜粋)

■LLP(Limited Liabiliy Partnership、有限責任事業組合)
《特徴》
LLPは、株式会社と組合のメリットを「いいとこどり」したもの。 次の4つの特徴だけはおさえておいてほしい。
・有限責任制(株式会社のメリット) よって、債権者保護制度あり。 ・内部自治原則(組合のメリット)   出資比率と異なる配分が可能   取締役会や監査役の設置は強制されない。 ・構成員課税(組合のメリット)   出資者に直接課税。LLPには課税されない。 ・共同事業性(組合のメリット)   意思決定は原則出資者全員で行う。   出資者全員で経営と業務執行に参加。   組合員が法人である場合は、職務執行者を選任する。
《LLPの魅力》
・LLPは、出資比率と異なる配分ができるため、出資者の労務や知的財産の提供に応じた配分ができる。例えば、資金のある大企業と、資金のない中小企業や個人とが出資してLLPを作り、利益配分は知的な貢献度等により決定することができる。資金の余裕はないが知的財産を有する研究者や教授等の活用が考えられる。 ・取締役会等の設置が強制されないため、スピード経営(迅速な意思決定)が可能。 ・「構成員課税」であるため、LLPで損失が出た場合、その損失と親会社等出資者の本業での利益とを通算(=相殺)し、納税額を少なくすることができる。黒字の場合は、出資者への利益配分に直接課税される。
《LLPの欠点》
・「構成員課税」であるため、故意に赤字決算を作り、課税逃れに悪用される可能性がある。 ・会社への変更ができない。

?・「共同事業性」であるため、出資だけの組合員は認められない。
《その他おさえておきたい点》
・「有限責任制」であるため、債権者保護のため財務諸表(BS、PL、付属明細書)の作成・開示が必要。 ・同じ理由で、債務超過時の利益配分は禁止。 ・同じ理由で、名称の中に「有限責任事業組合」の文字を使用し、登記が必要。 ・出資は金銭その他の財産に限定され、労務出資は禁止。 ・ギャンブルなどの投機的事業は不可。 ・公認会計士や税理士などの士業も不可(→有限責任制を付与することが相当でないため)。
《法律》 『有限責任事業組合契約に関する法律(通称:日本版LLP法)』(平成17年法律40号) 平成17年5月6日公布 平成17年8月1日施行

《ひとことふたこと》 LLPに関しては税制が不透明であるというネックがあります。 国税庁も通達を出しておらず、税務署に問い合わせてもはっきりとした回答が得られないようです。 「さおだけ屋~」の山田真哉公認会計士が日経金融新聞(2005/8/19)のインタビューでこのように答えていました。 『新制度で起業を活発にしたいのか、それとも脱税を取り締まりたいのか。国は答えを出してほしい。』 山田真哉氏も税制が不透明であるため、一部の業務を始めていないそうです。 せっかく、株式会社と組合の「いいとこどり」をした制度なのに、税がネックで利用されないようなことはあってはならないことですよね。

武田雄治ブログ

公認会計士 武田 雄治

コラムカテゴリ一覧