ちょっとマニアックな論点なのですが、今日は未実現消去仕訳(アップストリーム)の処理についてまとめてみました。前期に未実現消去仕訳(アップストリーム)を行っていた場合に、当期において持分比率の変動があったらどう処理するか?についてです。
【設例】
・X1年 子会社S社から親会社P社に土地900円を1000円で売却した
・P社はS社の発行済株式総数の80%を取得し、子会社としている
・税効果は考慮しない
<連結仕訳>未実現利益の消去(アップストリーム)
固定資産売却益 100 / 土地 100
少数株主持分 20 / 少数株主損益 20
・・解説・・
子会社S社の利益が未実現の場合、現行の日本基準では「全額消去・親会社負担方式」を採用していますので、いったん未実現全額を消去し、そのうち親会社の持分以外の部分を少数株主持分に振り替える処理を行います。
↑ ここまでは一般的な話なのですが、X2年に親会社P社がS社株式を追加購入して持分比率が90%となった場合の仕訳はどうなるでしょうか?3つの考え方を整理してみました。
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パターン① |
パターン② |
パターン③ |
考え方 |
持分比率の変動によって、少数株主按分額は変動させない
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持分比率の変動によって、少数株主按分額も変動させる(1)
⇒少持の相手科目は少数株主損益 |
持分比率の変動によって、少数株主按分額も変動させる(2)
⇒少持の相手科目はのれん |
連結仕訳 |
<開始仕訳>
剰余金期首 80 / 土地100
少持 20
<当期仕訳>
(仕訳なし)
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<開始仕訳>
剰余金期首 80 / 土地100
少持 20
<当期仕訳>
少株損益 10/少持 10
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<開始仕訳>
剰余金期首 80 / 土地 100
少持 20
<当期仕訳>
のれん(※) 10/少持 10
(※)資本連結で発生したのれんと合算する |
考え方の
根拠 |
「未実現利益の実現」はあくまでも当該資産を償却や売却した時であり、持分比率の変動によって実現はしないという基本原則に遵守 |
期末少数株主持分残高は(子会社純資産-未実現利益100)×10%(期末少持比率)となるべき
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期末少数株主持分残高は(子会社純資産-未実現利益100)×10%(期末少持比率)となるべき
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検討課題 |
期末少持残高(子会社純資産-未実現)×期末少持比率と一致しない
仮に少持が0%になった場合にも、未実現利益の按分だけは少持が残高として残ってしまう
⇒仮に少持が0%でも未実現の負担だけはさせてもよいのか? |
持分比率の変動により、当期の少数株主損益で過年度未実現少持負担額が実現する
⇒実現させてよいのか?
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未実現利益を”子会社純資産の修正”という位置づけでとらえた処理となってしまう
⇒本来の”のれん”の考え方と違うのでは?
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